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BIGFOOTが考える、プリビズ制作の大きなメリットのひとつ「士気上げ」に関して。

BIGFOOTでは切り込み隊的にプリビズ(※1)を作っていくのが得意です。

3Dモデルさえあれば、勝手にリグ(※2)を入れプリビズを作って行ったりもします。たまに無くても作ります。

脚本でこういう文があったとします。

「昼。ビル街。街に現れる怪獣。ヒーローがどこからともなく現れ、
格闘する。取っ組み合いの格闘。」

たった2行ですが、ポスプロ(※3)班はさてどうしたものかと頭を悩ませます。

・怪獣たちの大きさは?
・どういう街で?
・格闘とはどんな殺陣?
・モーションキャプチャ(※4)を使うべきか?
・どれくらいの物量が破壊されるのか?
・そんな予算あるのか?

などなど。2行から想像されることはもっとありますが、普通だったら絵コンテ(※5)が出来上がるまで待ちます。が、BIGFOOTはこの“待ち”が兎に角嫌いです。予算も時間も限られている邦画業界では、”待つ”ことは結果作品のためによろしくありません。

てわけでこちらが先の脚本の例文をもとに、勝手に作った(らどうなるか)動画です。この時、極力時間をかけないように、サクッと作ります。この動画はアニメーションに多少時間がかかっているほうではありますが…

こちらのモデルは怪獣モデルを田島光二氏に、ヒーローモデルを森田悠揮氏に提供して頂いたものです。ありがとうございます。

こうやってビル群に立たせて、動かし、カメラを覗くだけでも雰囲気がわかると思います。シン・ゴジラでもシン・ウルトラマンでも行われた「アングルを探る」、という作業ですが、最も楽しいパートの一つだと思います。単純にちょっとテンション上がりますよね。

↓ちなみにアングルを探るとは?具体的な動画

なんてことをやりながら出来上がったプリビズ動画を、何かの打ち合わせの終わった後、雑談レベルで監督やプロデューサーなどに見てもらいます。そうすると色んな反応が返ってきます。

「どれくらいの都市なのか(東京ならどこらへんなのか)、身長はこれぐらいにしましょうとか、足元に車を置いて破壊させるのはどうだろう?とか。車が必要であればこのモデルを作る必要がある、体重で壊れるアスファルトを見せたい、今度は破壊光線が見てみたい」などなど…色んなことがガーッと動き出すのを感じます。

アーティストというのは、ジャズセッション的に「お、そう作ってくる?じゃあこのアイデアを入れるともっと面白くなるとおもう」と、お互いを高めあっていくことが楽しい人種でもあります。そういった意味で士気が上がる、より作品が面白くなる。さらに、

・シーンのコンセプト、方向性がわかる
・作業の可視化
・アーティストの特性による活性化。モチベがあがる
・新しいアイデアへの期待。あらなるエンターテイメント
・R&Dを進められる。クオリティップですね
・スタッフの心の余裕。ストレスレスの現場

などなどがプリビズのメリットとして挙げられます。

特に最後の一つの、「スタッフの心の余裕。ストレスレスの現場」ってジツは一番強いと思ってまして、というのも、人間なにも状況がわからないってかなりストレスだと思うんですよね。やることが明確になることにより心に余裕が生まれ、さらに良いアイデア、気配り、自分の状況を俯瞰で見れるようになる。ストレスレスになるということですね。これが出来るようになるのがすこぶる強いと思っています。

何はなくとも無理やり道を切り開くことによってわかることもある。プリビズの大きなメリットのひとつです。

BIGFOOTのプリビズへのアプローチはちょっと道をそれていると自覚していますが、まあいいんじゃないっすかね、こういうプロダクションがあっても(無理やりのシメ)。

それでは皆さん、楽しいプリビズライフを!
BIGFOOT代表 熊本周平

 

※1
プリビズ=Previsualization の略。Pre “事前に” Visualization “視覚化する”ということ。
※2
リグ=3Dモデルに骨を入れ、アニメーション出来るようにする工程のこと。リギングともいう。
※3
ポスプロ=ポストプロダクションの略。CG制作、合成、編集など、撮影後の仕上げ作業をするセクションの総称。
※4
モーションキャプチャ=現実の役者さんの動きをCGキャラに入れ込む撮影法。
※5
絵コンテ=撮影前に用意される絵で説明された設計図。
リサーチ・アンド・デベロップメント、実験、開発のことです。エフェクトはいろんな試行錯誤で作っていきます

背景モデル
3D都市モデル(Project PLATEAU)東京都23区
出典:国土交通省ホームページ
https://www.geospatial.jp/ckan/dataset/plateau-tokyo23ku